1984年の京都大学・理系数学第3問は、動く直線と線分が通過する範囲を求める通過領域の問題です。本記事では、\(x\) を固定して2次関数の値の範囲を調べる本解を中心に、直線と線分で条件がどう変わるか、相加相乗平均や放物線の接線を使う別解、面積の検算のしかたを、京大や難関大・医学部をめざす受験生向けにわかりやすく解説します。通過領域で使える解法の選び方まで整理しました。

本問から学べること

  • 動く直線が通る範囲は、\(x\) を固定し、残る文字の2次関数が取りうる値の範囲として調べられます。
  • 直線と線分では、文字の動く範囲が変わります。線分では、端点に対応する条件が加わります。
  • 2次方程式が実数解をもつ条件(判別式)や、曲線とその接線の関係を使うと、通過範囲の境界がとらえられます。
  • 面積は、\(x\) で積分する分け方と \(y\) で積分する分け方の2通りで求めると、検算になります。
本記事を書いているSSS Educationは、東京大学理科三類の学生を中心に、医学部・難関大志望の受験生を指導する予備校です。私たちは過去問の分析を通じて「どの条件のときに、どの解法を選ぶか」という解法選択を、再現可能な手順として言語化することを指導の軸にしています。本問のような通過領域は、まさにその解法選択が問われる典型題です。


1984年の京大理系数学・第3問はどんな問題?

まずは問題を正確に確認します。京都大学・理系数学で過去に出題された、通過領域(軌跡と領域)の標準的な良問です。

問題(1984年 京都大学 理系 第3問)
実数 \(t\) の値によって定まる点 \(\mathrm{P}(t+1,\ t)\) と \(\mathrm{Q}(t-1,\ -t)\) がある。

(1) \(t\) がすべての実数を動くとき、直線 \(\mathrm{PQ}\) が通過する範囲を図示せよ。

(2) \(t\) が区間 \(0\leqq t\leqq 1\) を動くとき、線分 \(\mathrm{PQ}\) が通過する範囲の面積を求めよ。

通過領域の問題で最初に確認したいこと

通過領域は「パラメータ \(t\) が動くと、図形(ここでは直線や線分)が平面のどこを塗りつぶすか」を問う問題です。いきなり \(\mathrm{P}\) と \(\mathrm{Q}\) の座標を追いかけるより、直線を一つの式にまとめてしまうほうが、構造がはっきり見えます。

通る点と傾きを先に求めておきましょう。\(\mathrm{P}\) と \(\mathrm{Q}\) の中点は \(\mathrm{M}_t=(t,\ 0)\)、傾きは \(t\) です。したがって直線 \(\mathrm{PQ}\) は次のようにまとまります。

\[ L_t:\quad y=t(x-t)=tx-t^2 \]

また、線分上の点は、中点から方向ベクトル \((1,\ t)\) に沿って \(u(1,\ t)\) だけ進んだ点として \((x,y)=(t+u,\ tu)\) と書け、両端点は \(u=\pm 1\) に対応します。

この一本の式と、線分のときに加わる条件が、以降のすべての解法の出発点になります。

通過領域の問題はどこに注目して解法を選ぶ?

本問は解法が驚くほど豊富ですが、やみくもに手を動かす前に、注目すべき4つの着眼点を押さえると、自分に合ったアプローチを選べます。

  1. 端点ではなく、通る点と傾きで式にする。 本問では中点 \(\mathrm{M}_t=(t,0)\) を通り傾き \(t\) だから \(L_t:y=tx-t^2\)。式が一本になると、以降の見通しが一気によくなります。
  2. 「直線」か「線分」かで条件が変わる。 (1)は \(u\) に制約がなく、(2)は \(0\leqq t\leqq1\) と \(-1\leqq u\leqq1\) の二つの条件が付きます。この区別が最初の分岐点です。
  3. \(t\) について平方完成すると放物線が現れる。 \(y=tx-t^2\) を \(t\) について平方完成すると、\(x\) を固定したときの \(y\) の最大値が、ある放物線の式で表せます。この放物線が通過範囲の境界の候補になります。
  4. 直線が接する曲線と、接点の位置を調べる。 この直線は動きながら一つの放物線に接し、接点は \(\mathrm{T}_t=(2t,\ t^2)\) と表せます。\(0\leqq t\leqq1\) では \(t-1\leqq 2t\leqq t+1\) なので接点は線分上にあり、これが(2)の境界の形を左右します。

この4点から、本問には大きく3つの入口があります。(A) 直線の式を、\(x\) を固定して調べる、(B) 線分内の点を「和と積」\((t+u,\ tu)\) とみる、(C) 端点の運動を追うです。高校数学の試験場で最も安全なのは(A)で、特に \(x\) を固定して \(t\) の2次関数の値の範囲を調べる方法が王道になります。計算を短くしたいときは \(y\) を固定して相加相乗平均を使い、図形で見通したいときは放物線の接線として捉えます。

迷ったときの指針はシンプルです。まず \(x\) か \(y\) の一方を固定し、動かせる文字の範囲を決めてから、最大・最小を調べる。境界を見つけただけで満足せず、その間がすべて埋まることまで確認する——この順番を崩さないことが、通過領域で点を落とさないコツです。

【本解】x を固定し2次関数の値域で通過範囲を求める

最も再現性が高く、答案として安全に書き切れる本解です。発想は「\(x\) を一つ固定し、そのとき \(y\) が動く範囲を調べる」こと。これだけで(1)も(2)も必要十分に処理できます。

解法のポイント(STEP)

  1. 直線の方程式 \(y=tx-t^2\) を出し、(1)は \(t\) の2次関数の値の範囲を求める。
  2. (2)は \(0\leqq t\leqq1\) に線分条件 \(|x-t|\leqq1\) を加える。
  3. \(x\) ごとに \(t\) の動く範囲を決め、\(f_x(t)=xt-t^2\) の最大・最小を求める。
  4. 連続性で領域内部が埋まることを保証し、積分して面積を求める。

模範解答((1) 直線PQの通過範囲)

\(x\) を固定して平方完成すると、

\[ y=tx-t^2=\dfrac{x^2}{4}-\left(t-\dfrac{x}{2}\right)^2 \]

\(t\) は任意の実数を動くので、\(\left(t-\dfrac{x}{2}\right)^2\) は \(0\) 以上のすべての値をとり、\(y\) は \(\dfrac{x^2}{4}\) 以下のすべての値をとります。よって求める範囲は

\[ \boxed{\,y\leqq \dfrac{x^2}{4}\,}\qquad(\text{放物線 }y=\dfrac{x^2}{4}\text{ とその下側。境界を含む}) \]

です(図1)。直線 \(L_t\) は放物線 \(y=\dfrac{x^2}{4}\) に接しながら動き、その接点をなぞるように下側全体を通過します。

直線 L_t が放物線 y=x^2/4 に接しながら動き、その下側全体を通過する様子を示した図
図1:直線 \(L_t\) は放物線 \(y=\dfrac{x^2}{4}\) に接しながら動き、その下側全体(境界を含む)を通過する。これが(1)の通過範囲。

模範解答((2) 線分PQの通過範囲の面積)

線分上の点は \((x,y)=(t+u,\ tu)\)、\(0\leqq t\leqq1\)、\(-1\leqq u\leqq1\) と表せます。\(u=x-t\) なので \(y=xt-t^2\) です。\(x\) を固定すると、\(t\) は \(0\leqq t\leqq1\) と \(x-1\leqq t\leqq x+1\) の両方を満たす範囲、すなわち

\[ \max(0,\ x-1)\ \leqq\ t\ \leqq\ \min(1,\ x+1) \]

を動きます(\(\max\) は大きいほう、\(\min\) は小さいほうを表します)。この範囲が存在するのは \(-1\leqq x\leqq2\) のときに限ります。\(f_x(t)=xt-t^2\) は軸が \(t=\dfrac{x}{2}\) の上に凸な2次関数なので、各 \(x\) での最小値・最大値は次の表のとおりです。

\(x\) の範囲 \(t\) の動く範囲 最小 \(f_x\) 最大 \(f_x\)
\(-1\leqq x\leqq0\) \(0\leqq t\leqq x+1\) \(-x-1\) \(0\)
\(0\leqq x\leqq1\) \(0\leqq t\leqq 1\) \(x-1\) \(\dfrac{x^2}{4}\)
\(1\leqq x\leqq2\) \(x-1\leqq t\leqq 1\) \(x-1\) \(\dfrac{x^2}{4}\)

\(x\leqq0\) では \(f_x\) がその範囲で減少し、\(0\leqq x\leqq2\) では軸 \(t=\dfrac{x}{2}\) がその範囲に入って最大値 \(\dfrac{x^2}{4}\) を与えます。\(t\) の動く範囲は切れ目のない区間で \(f_x\) は連続なので、各行の最小値から最大値までをすべてとります。したがって通過範囲は

\[ \begin{aligned}
&-1\leqq x\leqq0 \ \text{では}\ -x-1\leqq y\leqq 0,\\
&\ \ 0\leqq x\leqq2 \ \text{では}\ \ x-1\leqq y\leqq \dfrac{x^2}{4}.
\end{aligned} \]

重要な点を \(\mathrm{A}(-1,0),\ \mathrm{B}(0,0),\ \mathrm{C}(2,1),\ \mathrm{D}(0,-1),\ \mathrm{E}(1,0)\) とおくと、外周は \(\mathrm{A}\to \mathrm{B}\to \mathrm{C}\to \mathrm{D}\to \mathrm{A}\) で、\(\mathrm{BC}\) だけが放物線の弧です。

線分PQが通過する範囲と重要点A〜E、放物線の弧BCを示した図
図2:線分に限ると、放物線の弧 \(\mathrm{BC}\) と端点由来の直線 \(\mathrm{AD}\)・\(\mathrm{DC}\) で囲まれた有界領域になる。青線は実際の線分 \(\mathrm{P}_t\mathrm{Q}_t\)、金点は接点 \(\mathrm{T}_t\)。

よって面積 \(S\) は、\(x\) について積分して

\[ \begin{aligned}
S&=\int_{-1}^{0}(x+1)\,dx+\int_{0}^{2}\left(\dfrac{x^2}{4}-x+1\right)dx\\
&=\dfrac12+\dfrac14\int_0^2(x-2)^2\,dx=\dfrac12+\dfrac23=\boxed{\dfrac{7}{6}}.
\end{aligned} \]

右側の被積分関数は \(\dfrac{x^2}{4}-x+1=\dfrac{(x-2)^2}{4}\) とまとめると計算が速くなります。

この面積は、分け方を変えても同じ \(\dfrac{7}{6}\) になります。\(x\) で積分すれば \(\dfrac12+\dfrac23\)、\(y\) で積分すれば(\(y=0\) で上下に分けて)\(1+\dfrac16\) です。両方で一致することが、そのまま検算になります。

通過範囲の面積7/6を、xで積分する分け方とyで積分する分け方の2通りで示した図
図3:同じ面積 \(S=\dfrac{7}{6}\) が、\(x\) で積分して求めても(図左)、\(y\) で積分して求めても(図右)得られる。分け方を変えると検算になる。

論述・計算のコツ

  • 「直線上」なら \(y=tx-t^2\) だけでよいですが、「線分上」では必ず \(|x-t|\leqq1\) が加わります。この一行を落とすと、(1)と同じ放物線の下側を誤って使ってしまいます。
  • 場合分けの境目は、\(t\) の動く範囲が切り替わる \(x=0,\ 1\) に従います。表にまとめると記述が短くなります。
  • 上下の境界を求めただけで終えないこと。\(t\) の動く範囲が区間で \(f_x\) が連続だから「その間もすべて実現する」と一言添えて、必要十分であることを示します。

試験場での検算ポイント

  • \(x=-1,\ 0,\ 2\) で上下の境界が正しくつながるかを確認します。特に \(x<0\) の上端は \(y=0\) であって \(\dfrac{x^2}{4}\) ではありません。
  • \(t=0\) の線分(\(y=0\)、\(-1\leqq x\leqq1\))と、\(t=1\) の線分 \(\mathrm{DC}\) が結果に含まれているかを見ます。
  • 面積は左の三角形 \(\dfrac12\) と右の部分 \(\dfrac23\) の和。合計が \(1\) より大きいこと(\(\dfrac{7}{6}\))を押さえておくと、桁や符号のミスに気づけます。

相加相乗平均を使う別解で計算を短くできる?

本解では \(x\) を固定しました。ここでは発想を変え、\(y\) を固定して考えます。積 \(y=tu\) を固定すると、和 \(x=t+u\) の動く範囲が相加相乗平均で一気に見えるのが利点です。

y を固定して相加相乗平均で面積を求める手順

(1)は、点 \((x,y)\) が \(L_t\) 上にある条件 \(t^2-xt+y=0\) が実数解をもつこと、すなわち判別式 \(x^2-4y\geqq0\) から \(y\leqq \dfrac{x^2}{4}\) が出ます(本解と同じ)。

(2)は \(y\) の符号で分けます。

\(y<0\) のとき。 \(y=-a\)(\(0<a\leqq1\))とおくと \(u=-\dfrac{a}{t}\)、\(a\leqq t\leqq1\) で \(x=t-\dfrac{a}{t}\) は単調増加。よって \(x\) は \(a-1\) から \(1-a\) までを動き、各 \(y\) での \(x\) の幅は \(2(1+y)\)。したがって

\[ S_{-}=\int_{-1}^{0}2(1+y)\,dy=1 \]

\(y>0\) のとき。 \(0<y\leqq1\)、\(y\leqq t\leqq1\) として \(x=t+\dfrac{y}{t}\)。相加相乗平均より \(x\geqq 2\sqrt{y}\)(等号は \(t=\sqrt{y}\))、区間の端で \(x\leqq 1+y\)。連続性から途中も実現するので

\[ S_{+}=\int_{0}^{1}\bigl(1+y-2\sqrt{y}\bigr)\,dy=\Bigl[y+\dfrac{y^2}{2}-\dfrac43 y^{3/2}\Bigr]_0^1=\dfrac16 \]

合わせて \(S=S_{-}+S_{+}=1+\dfrac16=\dfrac{7}{6}\)。図3で \(y\) 軸方向に分けた \(1+\dfrac16\) が、この計算に対応します。

本解との違いと、この別解が有効な場面

本解との違いは、固定するのが \(x\) か \(y\) かという一点です。本問では \(y\) を固定するほうが積分が短くなります。積 \(tu\) が与えられて和 \(t+u\) の最小値を知りたいという形は、相加相乗平均の典型です。積を固定したときに和の範囲が素直に見える問題では、この「\(y\) を固定する」解法が強力な選択肢になります。

動く直線を放物線の接線と見るとどう解ける?

三つ目は、積分に入る前に図形で見通す別解です。\(L_t\) が放物線 \(y=\dfrac{x^2}{4}\) の接線だと見抜くと、(2)の領域は、\(y<0\) の三角形と、\(y>0\) の「放物線と2本の接線で囲まれた部分」に分かれます。

放物線の接線を使って面積を求める

\(\dfrac{x^2}{4}-(tx-t^2)=\left(t-\dfrac{x}{2}\right)^2\geqq0\) なので、\(L_t\) は点 \(\mathrm{T}_t=(2t,\ t^2)\) で放物線に接します。\(0\leqq t\leqq1\) では接点が線分上にあり、放物線の弧 \(\mathrm{BC}\) が上側の境界になります。

領域を \(y\) の符号で分けると、\(y<0\) の部分は三角形 \(\mathrm{ADE}\)(\(\mathrm{A}(-1,0),\ \mathrm{D}(0,-1),\ \mathrm{E}(1,0)\))で面積 \(1\)。\(y>0\) の部分は、放物線の弧 \(\mathrm{BC}\) と、2本の接線上の線分 \(\mathrm{BE}\)・\(\mathrm{EC}\) で囲まれた部分です。

この部分は、三角形 \(\mathrm{BEC}\) から「放物線と線分 \(\mathrm{BC}\) で囲まれた部分」を引いて求めます。線分 \(\mathrm{BC}\) は \(y=\dfrac{x}{2}\) なので、放物線と線分 \(\mathrm{BC}\) で囲まれた部分の面積と三角形 \(\mathrm{BEC}\) の面積は

\[ \int_0^2\left(\dfrac{x}{2}-\dfrac{x^2}{4}\right)dx=\dfrac13,\qquad [\mathrm{BEC}]=\dfrac12 \]

です。よって求める部分の面積は \(\dfrac12-\dfrac13=\dfrac16\)。全体では

\[ S=1+\left(\dfrac12-\dfrac13\right)=1+\dfrac16=\dfrac{7}{6} \]

接線の集まりだから外周は放物線、と即断しないことが大切です。接点が線分上にあること、さらに各 \(x\) で端から端まで途切れず埋まることまで確認して、はじめて境界だと言えます。放物線と2本の接線で囲まれた部分は三角形 \(\mathrm{BEC}\) より小さいので、放物線と線分 \(\mathrm{BC}\) で囲まれた部分を引く点にも注意してください。

参考:(1)は焦点・準線でも説明できる

発展的な見方として、(1)は図形的にも説明できます。点 \(\mathrm{F}(0,1)\) と直線 \(y=-1\) を用意すると、\(L_t\) は \(\mathrm{F}\) と点 \((2t,-1)\) の垂直二等分線になります。点 \(\mathrm{X}(x,y)\) がどれかの \(L_t\) 上にある条件は、\(\mathrm{X}\) から \(\mathrm{F}\) までの距離が、\(\mathrm{X}\) から直線 \(y=-1\) までの距離以上であること、すなわち \(\sqrt{x^2+(y-1)^2}\geqq|y+1|\) です。両辺を2乗すると \(y\leqq \dfrac{x^2}{4}\) が得られます。これは「焦点 \(\mathrm{F}\)、準線 \(y=-1\) の放物線」という見方そのものです。ただし(2)の線分条件はこの距離だけでは決まらないため、面積は本解などで領域を確定します。

各解法の比較でわかる、通過領域の解法選択の原理

ここまでの3つの解法を、試験場での使い勝手で比べます。どれも面積は \(\dfrac{7}{6}\) になりますが、必要な発想と計算量が違います。

解法 発想の自然さ 計算量 再現性・安全性 ひとことで
本解(\(x\) を固定) 高い 中 高い 迷ったらこれ。境界を必要十分に確定できる
別解1(\(y\) を固定+相加相乗平均) 中〜高 小 中 積分が短い。積を固定する発想が効く場面向き
別解2(放物線の接線) 中 小 中 図形で見通す。接線と気づけたら速い

本問の美しさは、見た目の違う解法が同じ一本の式でつながっている点にあります。「放物線の接線」「2次方程式 \(t^2-xt+y=0\) の二つの解」「和と積 \((t+u,\ tu)\)」が、すべて同じ構造です。実際、2本の接線 \(L_s,\ L_t\) の交点は \((s+t,\ st)\) で、これは二つの解の和と積そのものになっています。この橋がかかっていることに気づくと、どの解法も同じ地図の上に位置づけられます。

なお、大学で学ぶ道具を使えば、面積の拡大率(ヤコビアン)で重複を除いて積分する方法、領域を三角形に分けて放物線と直線で囲まれた面積の公式(いわゆる \(\dfrac16\) 公式など)で積分を減らす方法、境界に沿った積分(グリーンの定理)で面積を出す方法など、さらに多彩な解法があります。いずれも入試の答案に必須ではありませんが、本解の発想を一般化したものとして知っておくと、通過領域の見通しがぐっと広がります。

冒頭の「本問から学べること」に戻ると、本問は次の4点を具体的に教えてくれました。第一に、動く直線が通る範囲は \(x\) を固定して2次関数の値の範囲として調べられること。第二に、直線と線分では文字の動く範囲が変わり、線分では端点に対応する条件が加わること。第三に、2次方程式が実数解をもつ条件や放物線と接線の関係が、通過範囲の境界を決めること。第四に、面積は \(x\) で積分する分け方と \(y\) で積分する分け方の2通りで検算できること。どれも、本問に限らず通過領域の多くの問題に持ち運べる考え方です。

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通過領域を安定して解くには何を練習すればいい?

最後に、本問を「一度解けた」で終わらせず、初見の通過領域でも崩れないようにするための練習手順を5つにまとめます。京大理系数学は、値を求める問題でも「答えに至る論理的な道筋」や「必要条件・十分条件への配慮」を見るように作られています(京都大学の出題意図)。通過領域はその力がそのまま試される単元です。

  1. 動く直線を、通る点と傾きで式にする。 端点の座標を直接追わず、直線の式・線分内の位置・端点の軌跡を先に用意します。
  2. 直線か線分かで、文字の動く範囲を分ける。 \(t\) の範囲と、線分内の位置 \(u\) の範囲を明示します。ここを曖昧にすると、直線のときの範囲を線分に流用する誤りが起きます。
  3. \(x\) か \(y\) を固定して、値の範囲を調べる。 まず固定した変数に対して \(t\) の動く範囲を決め、それから2次関数の最大・最小を取ります。
  4. 境界だけで満足せず、「埋まる」ことを示す。 連続性や2次方程式の解の配置で、上端と下端の間がすべて実現することを確認します。
  5. 重複を除き、別の分け方で検算する。 和と積のような対称式では二重の数え上げに注意し、\(x\) で積分する分け方と \(y\) で積分する分け方の両方で面積を確かめます。

この5手順は、動く直線・線分・曲線の通過領域を問う他の問題にもそのまま移植できます。難しいのは手順を知らないことではなく、初見の問題で「\(x\) と \(y\) のどちらを固定し、どこで場合分けし、どこまで示せば十分か」を自分一人で判断し続けることです。ここでつまずくと、成績に波が出やすくなります。

もし「解法は分かるのに本番で選べない」「通過領域や軌跡で詰まる」と感じるなら、自分の答案を他者の目で点検し、解法選択の分岐を言葉にしていく練習が近道です。解けた問題でも、どの着眼点で方針を決めたのかを振り返ると、再現性が上がっていきます。

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    通過領域は、直線のときと線分のときで何が違うのですか?

    直線は \(t\) だけが自由に動きますが、線分では「線分内のどこか」という条件(本問では \(-1\leqq u\leqq1\)、言い換えると \(|x-t|\leqq1\))が加わります。この条件を落とすと、(1)と同じ放物線の下側を(2)に使ってしまい、面積を過大に求める典型的な失敗になります。線分の問題では、まず \(t\) の範囲と線分内の位置の範囲を両方書き出すのが安全です。

    (1)で「境界を含む」としてよいのはなぜですか?

    放物線 \(y=\dfrac{x^2}{4}\) 上の点 \((2t,\ t^2)\) は、ちょうど \(L_t\) が接する点なので、その直線自身が通ります。つまり境界の放物線も通過範囲に含まれます。平方完成の式 \(y=\dfrac{x^2}{4}-\left(t-\dfrac{x}{2}\right)^2\) で、右辺が \(0\) になる \(t\)(\(t=\dfrac{x}{2}\))を選べば境界に到達することからも確認できます。

    本解と別解、試験本番ではどれを選べばよいですか?

    まず本解(\(x\) を固定する解法)を第一候補にしてください。境界を必要十分に確定でき、図示まで安全に書けるからです。積分を短くしたいときは \(y\) を固定して相加相乗平均を使う解法、放物線の接線だと見抜けたときは図形的な別解が有効です。時間と手応えに応じて、本解を軸にしつつ別解を「検算用の第二の見方」として持っておくと安定します。

    ヤコビアンやグリーンの定理を使う解法は、入試で書いてよいのですか?

    これらは高校の学習範囲を超える道具なので、答案の主役にするのは避けるのが無難です。入試は高校数学の範囲で論理的に説明することが求められます。本問であれば、平方完成・接線・相加相乗平均・定積分という高校範囲の道具だけで完結します。発展的な方法は、構造を深く理解したり、自分の答えを別の角度で検算したりするために使うとよいでしょう。

    通過領域が苦手です。まず何から練習すればよいですか?

    「動く図形を式にする→文字の動く範囲を分ける→\(x\) か \(y\) を固定して値の範囲を調べる→埋まることを示す→別の分け方で検算する」という流れを、同じ手順で何題も反復するのが近道です。最初は本問のように答えと図が分かっている問題で、各ステップを自分の言葉で説明し直すと、初見問題での再現性が上がります。

    参考文献

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