2027年の防衛医科大学校・医学教育部医学科の数学第6問は、絶対値のついた定積分の条件から数列を決め、区間の共通部分の長さを合計する融合問題です。本記事では、絶対値つき積分を導関数の増減による変化量として読み替え、2点での関数値が等しいという条件に変換する本解を中心に、共通部分をまとめて数える別解や試験場での検算まで、医学部・難関大学を目指す受験生と保護者に向けて、記述答案の形で解説します。

本問から学べること

  • 絶対値つき積分 \(\displaystyle\int|F'(x)|\,dx\) は、まず \(F\) の増減を調べ、単調な区間での端点の関数値の差として読み替えます。
  • 積分の上下端に未知数があるときは、絶対値を外す前に積分区間の向き(上端と下端の大小)を先に確定させます。
  • 引数が定数倍である二つの関数値が等しい条件は、差よりも比や対数差をとると未知数が速く求まります。
  • 解析の条件が区間の問題に変わったら、共通部分は「左端の大きい方から右端の小さい方まで」で機械的に求めます。
  • 重なりの長さの総和は、各交差を直接足す方法と、和集合の長さから引く方法の二通りで検算できます。

SSS Educationは、東京大学理科三類の学生を中心とする講師陣が、医学部・難関大学の数学を指導する予備校です。本問のように複数の解法が成り立つ問題では、どの方針を選び、どう記述し、どこで検算するかという判断が得点を左右します。個別指導では、こうした解法選択と答案の精度を一問ずつ確認しています。


目次

2027年防衛医科大学校・数学第6問の原題と最初に押さえたい3つの着眼点

はじめに問題文を正確に確認し、計算に入る前に構造を整理します。本問は、前半で積分条件から数列 \(\{a_k\}\) を決め、後半で区間の共通部分の長さを合計する二段構えの問題です。

第6問の問題文(2027年・防衛医科大学校・医学教育部医学科)

正の整数 \(k\) に対して、

\[ f_k(x)=\dfrac{e^{x}}{x^{k}}\qquad(x > 0) \]

とします。

\[ \int_{a_k}^{k}\bigl|f_k(x)-kf_{k+1}(x)\bigr|\,dx=\int_{k}^{2a_k}\bigl|f_k(x)-kf_{k+1}(x)\bigr|\,dx \]

を満たす正の実数 \(a_k\) を考えます。さらに、

\[ I_k=[a_k,\,2a_k],\qquad L_k=I_k\cap I_{k+1} \]

とおき、

\[ \sum_{k=1}^{10}|L_k| \]

を求めよ。ただし、区間 \(L\) に対し、\(|L|\) でその長さを表します。なお、\(I_k\cap I_{k+1}\) は二つの区間に共通して含まれる部分(共通部分)を表します。

着眼1:被積分関数は \(f_k\) の導関数という構造

最初に見るべきは、絶対値の中身 \(f_k(x)-kf_{k+1}(x)\) です。これは一見複雑ですが、\(f_k(x)=e^{x}x^{-k}\) を積の微分法で微分すると、

\[ f_k'(x)=\dfrac{e^{x}}{x^{k}}-\dfrac{ke^{x}}{x^{k+1}}=f_k(x)-kf_{k+1}(x)=\dfrac{e^{x}(x-k)}{x^{k+1}} \]

となり、被積分関数はちょうど \(f_k\) の導関数だと分かります。つまり問題の積分は \(\displaystyle\int|f_k'(x)|\,dx\) の形です。

導関数の絶対値を積分する量は、関数の増減を使って読み替えられます。一般に \(F\) が区間 \([u,v]\)(\(u < v\))で単調なら、\(\displaystyle\int_u^v|F'(x)|\,dx=|F(v)-F(u)|\) であり、これはグラフ上での縦方向の変化量(増減ぶんの合計)です。したがって本問は、積分の値を計算する問題ではなく、増減を使って積分条件を端点の関数値の条件に変える問題だと捉えます。

x=k で最小となるグラフ f_k(x)=e^x/x^k の上で、最小点 x=k を境に左の減少量と右の増加量が等しいことを示す図。a_k と 2a_k が同じ高さに乗る。
図1 グラフの増減と関数値が等しい2点。最小点 \(x=k\) を境に、左の減少量と右の増加量がともに縦の変化量であり、両者が等しいとき \(f_k(a_k)=f_k(2a_k)\) となる。

着眼2:積分区間の向きと最小点 \(x=k\) の位置関係

\(f_k'(x)=\dfrac{e^{x}(x-k)}{x^{k+1}}\) で、\(x > 0\) では \(\dfrac{e^{x}}{x^{k+1}} > 0\) ですから、符号は \(x-k\) だけで決まります。よって \(f_k\) は \(0 < x < k\) で減少、\(x > k\) で増加し、\(x=k\) で唯一の最小値をとります。

ここで見落としやすいのが、積分区間の向きです。定積分は上端と下端を入れ替えると符号が変わるので、絶対値つきの関数を積分していても、上下端が逆なら値は負になります。積分条件を満たす正の実数を \(a\) とすると、\(a\leqq\dfrac{k}{2}\) では左辺が正・右辺が非正、\(a\geqq k\) では左辺が非正・右辺が正となって条件は成り立ちません。ゆえに

\[ \dfrac{k}{2} < a < k,\qquad\text{すなわち}\quad a < k < 2a \]

が必要です。この範囲では最小点 \(x=k\) が二つの積分区間の境になり、左の積分は減少量 \(f_k(a)-f_k(k)\)、右の積分は増加量 \(f_k(2a)-f_k(k)\) に等しくなります。両者が等しいという条件は、図1のとおり

\[ f_k(a)=f_k(2a) \]

という条件(2点での関数値が等しい)に帰着します。なおグラフは直線 \(x=k\) に関して対称ではないため、最小点 \(x=k\) が \(a\) と \(2a\) の中点になるわけではありません。\(k=\dfrac{a+2a}{2}\) と早合点しないよう注意します。

着眼3:倍率2は関数値の比で処理する

この条件に現れる二つの引数 \(a\) と \(2a\) は定数倍の関係です。このように引数が定数倍のときは、関数値の差より比をとるほうが簡単になります。\(f_k(x)=e^{x}x^{-k}\) では、\(x\) を2倍すると分子は \(e^{x}\to e^{2x}\)、分母は \(x^{k}\to 2^{k}x^{k}\) と変わるので、比をとれば \(x^{k}\) が消えます。この構造から、\(a\) が \(k\) に比例する形で決まることが予想できます。具体的な値は本解で求めます。

第6問はどの順番で考える?解法選択のフローチャート

本問は、前半の「積分条件から \(a_k\) を決める」部分がどの解法でも共通し、後半の「区間の重なりをどう集計するか」で方針が分かれます。頭の中の手順を整理すると次のようになります。

  1. 被積分関数を導関数と見抜く。\(f_k-kf_{k+1}=f_k'\) に気づく。気づきにくければ、対数微分 \(\dfrac{f_k'}{f_k}=1-\dfrac{k}{x}\) を試すのも有効です。
  2. 導関数の符号と積分区間の向きを調べ、\(\dfrac{k}{2} < a_k < k\) を確認してから、積分条件を \(f_k(a_k)=f_k(2a_k)\) に変える。
  3. 引数が定数倍なので、関数値の比をとって \(a_k\) を決定し、範囲の確認と解の一意性をおさえる。
  4. ここで問題は解析から区間の幾何へ切り替わる。区間 \(I_k\) の端点の規則性を観察する。
  5. 重なりの集計法を選ぶ。各交差を直接求める本解、和集合の長さから復元する別解、対称差の一定性を使う参考解の三つが候補になる。

各交差の長さがすぐ求まるなら本解が最短です。個々の交差が複雑で総和だけ欲しいなら和集合の長さ、隣り合う対象の変化量が一定なら対称差、というのが選び方の目安です。試験場では、見通しのよさと再現性から本解を第一候補にします。

【本解】絶対値つき積分をどう関数値の条件に変える?

前半で積分条件を関数値の等式に変え、後半で区間の端点を直接比較します。発想が自然で計算量も少なく、試験場でそのまま再現しやすい解法です。

本解のSTEP(変化量から関数値の条件、そして区間の共通部分へ)

  1. \(f_k'(x)\) を計算し、被積分関数が導関数であることを見抜く。
  2. 積分区間の向きを確認し、積分条件を \(f_k(a_k)=f_k(2a_k)\) に変える。
  3. 関数値の比をとって \(a_k\) を決定し、範囲と一意性を確認する。
  4. \(I_k\) と \(I_{k+1}\) の端点を比較して \(|L_k|\) を求め、総和を計算する。

模範解答:数列 \(a_k\) と総和 \(\sum|L_k|\) の求め方

\(f_k(x)\) を微分すると、

\[ f_k'(x)=\dfrac{e^{x}}{x^{k}}-\dfrac{ke^{x}}{x^{k+1}}=f_k(x)-kf_{k+1}(x)=\dfrac{e^{x}(x-k)}{x^{k+1}} \]

となります。\(x > 0\) で \(\dfrac{e^{x}}{x^{k+1}} > 0\) ですから、\(f_k\) は \(0 < x < k\) で減少、\(x > k\) で増加し、\(x=k\) で最小です。

積分条件を満たす正の実数を \(a\) とします。\(a\leqq\dfrac{k}{2}\) のとき左辺は正・右辺は非正、\(a\geqq k\) のとき左辺は非正・右辺は正となり、いずれも条件を満たしません。よって

\[ \dfrac{k}{2} < a < k,\qquad a < k < 2a \]

です。この範囲では、

\[ \int_a^k|f_k'(x)|\,dx=f_k(a)-f_k(k) \]

\[ \int_k^{2a}|f_k'(x)|\,dx=f_k(2a)-f_k(k) \]

ですから、積分条件は \(f_k(a)=f_k(2a)\) と同値です。両辺の比をとると、

\[ 1=\dfrac{f_k(2a)}{f_k(a)}=\dfrac{e^{2a}}{(2a)^{k}}\cdot\dfrac{a^{k}}{e^{a}}=\dfrac{e^{a}}{2^{k}} \]

となり、\(e^{a}=2^{k}\)、すなわち \(a=k\log 2\) を得ます(\(\log\) は自然対数)。

ここで \(\dfrac{1}{t}\) を \(1\leqq t\leqq 2\) で積分すると、

\[ \dfrac{1}{2} < \int_1^2\dfrac{dt}{t}=\log 2 < 1 \]

ですから、\(\dfrac{k}{2} < k\log 2 < k\) となり、\(a=k\log 2\) は必要な範囲にあります。また \(e^{a}=2^{k}\) の正の解は一意ですから、

\[ a_k=k\log 2 \]

と定まります。以下、\(c=\log 2\) とおきます。すると

\[ I_k=[kc,\,2kc],\qquad I_{k+1}=[(k+1)c,\,2(k+1)c] \]

です。\(k\geqq 1\) のとき \(k < k+1\leqq 2k < 2(k+1)\) が成り立つので、共通部分は左端の大きい方から右端の小さい方までとなり、

\[ L_k=I_k\cap I_{k+1}=[(k+1)c,\,2kc] \]

\[ |L_k|=2kc-(k+1)c=(k-1)c \]

です。区間が帯としてどう重なるかを図にすると、下のようになります。

区間 I_k=[kc,2kc] を帯で積み上げ、隣り合う区間の共通部分 L_k を金色で強調した図。|L_k| が 0, c, 2c, 3c, 4c と等差で伸びる。
図2 区間の帯と共通部分。\(I_k=[kc,2kc]\) の重なり \(L_k=[(k+1)c,2kc]\) の長さは \(0,\,c,\,2c,\dots\) と等差で伸びる。\(I_1\) と \(I_2\) は一点 \(2c\) で接するだけで \(|L_1|=0\)。

したがって、

\[ \sum_{k=1}^{10}|L_k|=c\sum_{k=1}^{10}(k-1)=c(0+1+\cdots+9)=45c \]

となり、求める値は

\[ \sum_{k=1}^{10}|L_k|=45\log 2 \]

です。

記述と計算のコツ(積分の向きと関数値の比)

第一に、絶対値がついていても積分の向きが逆なら値は負になります。\(\dfrac{k}{2} < a < k\) の範囲確認は、絶対値を外すための論理的な前提なので省きません。第二に、\(f_k(a)-f_k(k)=f_k(2a)-f_k(k)\) では最小値 \(f_k(k)\) が消えるので、その値を計算する必要はありません。範囲確認のあとなら \(0=\displaystyle\int_a^{2a}f_k'(x)\,dx\) と一つの積分にまとめてもかまいません。第三に、関数値が等しいという条件を見たら差を展開せず比をとると、分母の \(a^{k}\) が一度に消えて計算ミスを防げます。最後に、区間の共通部分は \((k+1)c\leqq 2kc\) を確認してから書くと、交差の有無で迷いません。

試験場での検算ポイント(\(\log 2\) の評価と \(k=1\) の一点接触)

  1. \(a_k=k\log 2\) が \(\dfrac{k}{2} < a_k < k\) を満たすか確認する。\(\log 2\) は \(\dfrac12\) と \(1\) の間にあるので成立します。
  2. 逆代入すると \(\dfrac{f_k(2a_k)}{f_k(a_k)}=\dfrac{e^{k\log 2}}{2^{k}}=1\) となり、\(f_k(a_k)=f_k(2a_k)\) が成り立つことを確かめられます。
  3. \(k=1\) では \(I_1=[c,2c]\)、\(I_2=[2c,4c]\) なので \(L_1=\{2c\}\)、\(|L_1|=0\)。一点で接するのであって空集合ではありません。
  4. \(|L_k|\) は \(0,\,c,\,2c,\dots,9c\) という等差数列です。初項と末項の平均 \(\dfrac{9c}{2}\) に項数 \(10\) を掛けると \(45c\) になり、本解の結果と一致します。

別解1:各共通部分を求めずに総和だけ出せる?

本解は各 \(L_k\) を直接求めました。別解1では、区間を順に重ねたときの全体の長さの増え方に注目し、個々の交差を計算せずに総和だけを一気に求めます。前半で \(a_k=k\log 2\) が得られることは本解と同じなので、ここからは後半の発想の違いだけを示します。

別解1のSTEP(和集合の長さを順にたどる)

  1. \(I_1,I_2,\dots,I_{11}\) を順に重ねた和集合 \(U_j\) を考える。
  2. 新しく加える区間のうち、すでに覆われた部分が直前の交差 \(L_j\) に一致することを示す。
  3. 各区間の長さの延べ合計から、和集合全体の長さを引いて総和を求める。

模範解答:延べ長さと和集合の長さの差で総和を求める

\(c=\log 2\) として \(I_k=[kc,2kc]\) とします。正の整数 \(j\) に対し \(U_j=\displaystyle\bigcup_{i=1}^{j}I_i\) とおきます。左右の端点が添字とともに増え、\((j+1)c\leqq 2jc\)(\(j\geqq 1\))なので隣り合う区間は接するか重なり、

\[ U_j=[c,\,2jc] \]

となります。さらに、

\[ U_j\cap I_{j+1}=[c,2jc]\cap[(j+1)c,2(j+1)c]=[(j+1)c,2jc]=I_j\cap I_{j+1}=L_j \]

です。和集合の長さの公式 \(|A\cup B|=|A|+|B|-|A\cap B|\) から、

\[ |U_{j+1}|=|U_j|+|I_{j+1}|-|L_j| \]

を得ます。\(j=1,2,\dots,10\) で加え、\(U_1=I_1\) を用いると、

\[ \sum_{j=1}^{10}|L_j|=\sum_{j=1}^{11}|I_j|-|U_{11}| \]

となります。\(|I_j|=jc\) なので \(\displaystyle\sum_{j=1}^{11}|I_j|=c\sum_{j=1}^{11}j=66c\)、また \(U_{11}=[c,22c]\) より \(|U_{11}|=21c\) です。したがって、

\[ \sum_{k=1}^{10}|L_k|=66c-21c=45c=45\log 2 \]

となり、本解と一致します。全体像は下の図のとおりです。

I_1 から I_11 までを積み上げ、その和集合 U_11=[c,22c] を下に示した図。延べ長さ66cから和集合の長さ21cを引くと重なりの総和45cになる。
図3 別解1の全体像。\(I_1\) から \(I_{11}\) の延べ長さ \(66c\) から和集合の長さ \(21c\) を引くと、重なりの総和 \(45c\) が得られる。

別解1の注意点(包除原理との違い)

「延べ長さから和集合の長さを引くと隣接交差の総和になる」という関係は、どんな区間の集まりでも成り立つわけではありません。本問では端点が単調に動き、\(U_j\cap I_{j+1}=L_j\) が成り立つからこそ使えます。三つ以上の区間が同時に重なる部分もあるため、この式を「包除原理の二項から先を省いたもの」と説明してはいけません。区間を一つずつ加えたときの長さの増分を利用している、と述べるのが正確です。なお必要な区間は \(I_1\) から \(I_{11}\) までの11個で、求める交差は \(L_1\) から \(L_{10}\) までの10個である点にも注意します。

参考解1:隣り合う区間の対称差はなぜ一定?

共通部分ではなく、二つの区間のうち一方にだけ属する部分(対称差)に注目する見方です。本問では \(k\) が1増えると左端は \(c\)、右端は \(2c\) だけ動くので、対称差の長さが \(k\) によらず一定になります。これを不変量として使います。

参考解1の考え方(対称差 \(A\triangle B\) の長さ)

二つの集合 \(A,B\) に対し、対称差を \(A\triangle B=(A\setminus B)\cup(B\setminus A)\) と定めます。これは一方にだけ属する点の集合で、長さについて \(|A\triangle B|=|A|+|B|-2|A\cap B|\) が成り立ちます。共通部分を2回引く点(係数の2)がポイントです。

模範解答:対称差 \(3c\) の一定性から総和を出す

\(c=\log 2\) として \(I_k=[kc,2kc]\)、\(I_{k+1}=[(k+1)c,2(k+1)c]\) とします。\(k\geqq 1\) で \(k < k+1\leqq 2k < 2(k+1)\) ですから、左側で外れる部分 \(I_k\setminus I_{k+1}=[kc,(k+1)c)\) の長さは \(c\)、右側で増える部分 \(I_{k+1}\setminus I_k=(2kc,2(k+1)c]\) の長さは \(2c\) です。よって

\[ |I_k\triangle I_{k+1}|=c+2c=3c \]

と、\(k\) によらず一定になります。\(|I_k|=kc\)、\(|I_{k+1}|=(k+1)c\) なので、

\[ 2|L_k|=|I_k|+|I_{k+1}|-|I_k\triangle I_{k+1}|=kc+(k+1)c-3c \]

です。\(k=1,\dots,10\) で加えると、

\[ 2\sum_{k=1}^{10}|L_k|=c\sum_{k=1}^{10}(2k+1)-30c=c(2\cdot 55+10)-30c=90c \]

となり、\(\displaystyle\sum_{k=1}^{10}|L_k|=45c=45\log 2\) を得ます。対称差の長さ \(3c\) は、区間の長さの差 \(|I_{k+1}|-|I_k|=c\) とは別物である点に注意します。

補足:共通部分の平行移動と単位区間の数え上げ

これらは本解と同じ端点配置を使う見方で、独立した解法として数えるものではありませんが、構造の理解に役立ちます。まず平行移動では、\(L_k=[(k+1)c,2kc]\) が \(I_{k-1}=[(k-1)c,2(k-1)c]\) を右に \(2c\) 動かした集合 \(I_{k-1}+2c=[(k+1)c,2kc]\) に一致します。\(I_0=\{0\}\) と定めれば \(k=1\) も含めて \(|L_k|=|I_{k-1}|=(k-1)c\) と書けます。次に数え上げでは、\(c\) を長さの単位にとると \(\dfrac{1}{c}L_k=[k+1,2k]\) が長さ1の単位区間を \(k-1\) 個含むので、\(k=1,\dots,10\) で延べ \(0+1+\cdots+9={}_{10}\mathrm{C}_{2}=45\) 個となり、実際の長さは \(45c=45\log 2\) です。連続量の問題が整数の数え上げに移る様子が見えます。

3つの解法の比較と第6問から学ぶ解法原理

前半はどの解法も共通で、\(f_k-kf_{k+1}=f_k'\) を見抜き、\(f_k(a_k)=f_k(2a_k)\) を経て \(a_k=k\log 2\) に至ります。違いは後半で、何を集計の対象にするかにあります。

本解・別解1・参考解1の比較(計算量・再現性・応用)

比較観点 本解(端点比較) 別解1(和集合の長さ) 参考解1(対称差)
基本の着眼 各交差の端点を直接求める 和集合の増分を集計する 対称差の長さを見る
発想の自然さ 高い 中程度 やや特殊
計算量 少ない 少ない(補助記号が必要) 少ない(式がやや特殊)
試験場での再現性 非常に高い 中程度 やや低い
主な応用先 区間の交差一般 多数の区間の和集合の長さを求める問題 集合の差分・変化量の問題

本問では \(a_k\) を決めた時点で \(I_k=[kc,2kc]\) という単純な区間が得られ、端点比較がほぼ自動で進みます。補助的な集合や恒等式がいらない分、本解が最も実戦的です。別解1は各交差を求めずに総和だけ出せるので、区間や図形が多数重なる問題に応用できます。参考解1は、求める対象そのものではなく隣接する対象の差分を見るという発想に価値があります。

第6問から学べることの総括(他問題にも効く解法原理)

冒頭の要点に戻って整理します。積分 \(\displaystyle\int|F'|\,dx\) が現れたら、計算より先に \(F\) の増減を調べ、単調な区間での端点の関数値の差として読みました(要点1)。上下端に未知数があったので、絶対値を外す前に \(\dfrac{k}{2} < a_k < k\) と向きを確定させました(要点2)。引数が定数倍だったので、差ではなく比をとって \(a_k\) を一気に求めました(要点3)。問題が区間の幾何に変わってからは、共通部分を「左端の大きい方から右端の小さい方まで」で機械的に出しました(要点4)。そして総和は、各交差を直接足す本解と、和集合の長さから引く別解1の二通りで一致を確認できました(要点5)。

最後に、本問は \(10\) 項に限りません。同じ議論から、任意の正の整数 \(n\) に対して \(\displaystyle\sum_{k=1}^{n}|L_k|=\dfrac{n(n-1)}{2}\log 2={}_{n}\mathrm{C}_{2}\log 2\) が成り立ちます。値そのものより、複雑な条件の構造を見抜いて、より単純な対象へ段階的に変換する姿勢が、本問から持ち帰るべき学びです。

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過去問1問を本番の得点力に変えるには?

第6問のような問題は、「解けた」で終えると得点力に結びつきません。一問を最大限に使うには、次の四つを習慣にすると効果的です。

  • 別解で検算する:本解の答えを、別解1や参考解1で独立に確かめます。同じ \(45\log 2\) に別経路でたどり着ければ、計算と論理の両方を点検できます。
  • 記述を自分で採点する:積分の向きの確認、\(\dfrac{k}{2} < a_k < k\) の範囲、解の一意性、\(k=1\) の一点接触を、答案に書けているか見直します。これらは減点されやすい箇所です。
  • 解法選択の判断を言葉にする:なぜ本解を選んだか、どの条件で別解に切り替えるかを一言で残すと、初見の問題でも方針が立てやすくなります。
  • 詰まった地点を記録する:導関数に気づけなかったのか、向きの確認を飛ばしたのかを特定し、次に同じ型が来たときの着眼点にします。

こうした振り返りを一人で続けるのは根気がいります。第三者に答案を見てもらい、着眼と記述を一問ずつ確認できると、同じ一問から得られるものが大きく変わります。SSS Educationの個別指導や学習サポートでは、解法選択と答案の精度を具体的に点検しながら、医学部・難関大学の数学を進めています。

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    Q&A

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    防衛医科大学校の数学はどの分野が出やすいですか?

    本問は数学Ⅲの微分積分を軸に、数列や区間(集合)の考え方を組み合わせた融合問題です。出題範囲や科目は年度で変わるため、受験の際は必ず最新の募集要項・受験案内で確認してください。なお2027年度(令和9年度)入校の受験案内では、数学の範囲として数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・A・B(数列)・C(ベクトル、平面上の曲線と複素数平面)が示されています。

    絶対値つき積分は、いつも値が非負だと考えてよいですか?

    いいえ。\(\displaystyle\int_u^v|g(x)|\,dx\) が非負になるのは下端 \(u\) が上端 \(v\) 以下のときです。本問のように上下端に未知数が入る場合は、どちらが大きいかで符号が変わります。だからこそ、絶対値を外す前に積分区間の向きを確定させる必要があります。

    \(f_k(a)=f_k(2a)\) から、最小点 \(k\) は \(a\) と \(2a\) の中点だと言えますか?

    言えません。このグラフは一般に直線 \(x=k\) に関して対称ではないため、等しい高さの二点の中点が最小点になるとは限りません。本問で成り立つのは関数値が等しいという条件 \(f_k(a)=f_k(2a)\) であり、\(k=\dfrac{a+2a}{2}\) ではありません。背景を知りたい場合は、最小点が二点の対数平均に一致する、という見方があります(高校の範囲では対数の計算だけで十分です)。

    項数が10ではなく一般の \(n\) 項ならどうなりますか?

    同じ構造から \(\displaystyle\sum_{k=1}^{n}|L_k|=\dfrac{n(n-1)}{2}\log 2\) が成り立ちます。\(|L_k|=(k-1)\log 2\) が等差数列なので、項数を変えても等差数列の和として計算できます。

    この問題に、答案で図やグラフは必要ですか?

    必須ではありませんが、方針を固めるうえで増減の把握は欠かせません。答案としては、増減表または \(f_k'\) の符号、積分区間の向きの確認、範囲 \(\dfrac{k}{2} < a_k < k\)、共通部分の端点比較を言葉と式で明記すれば十分です。図は下書きで方針を確かめるために使うとよいでしょう。

    参考文献

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