2027年度の防衛医科大学校・医学教育部医学科の数学第5問は、円周上を動く点に対して距離の和を最小にする点を考え、その最短点の\(x\)座標の範囲を求める問題です。この記事では、反射で折れ線を一本の線分に変える本解を中心に、円の接線で方向の限界をとらえる考え方から、点を先に固定して実現可能性を調べる別解までを、医学部や難関大を目指す受験生に向けてていねいに解説します。

本問から学べること

  • 直線上の点を経由する距離の和の最小は、まず直線に関する反射で折れ線を一本の線分に置きかえて考えます。
  • 反射で生じた円を定点から見ると、視線の方向は二本の接線の間に限られ、その両端が最大・最小を決めます。
  • 最大値や最小値を直接求めず、点を先に固定して「実現できるか」を円と直線の交差条件で判定する発想も有効です。
  • 和や積などの対称式だけを問われたら、二次方程式を解かずに解と係数の関係から読み取ると速く済みます。
  • 同じ極値の条件が接線・判別式・微分・二次形式など複数の見方で現れると意識すると、解法選択の幅が広がります。

SSS Educationは、東京大学理科三類の現役学生を中心とする講師陣が、医学部・難関大学を目指す受験生を指導する予備校です。本問のように解き方が何通りも考えられる問題では、答えにたどり着くだけでなく、試験場でどの方針を選ぶかという判断力を重視して指導しています。オンラインと対面の双方に対応し、日本全国の受験生が学べます。


目次

防衛医科大学校2027年数学第5問はどんな問題?

はじめに、原典の問題文をそのまま確認します。前半は直線に関する対称点、後半は距離の和を最小にする点の位置を問う構成です。短い問題文の中に、図形と方程式・三角比・最短経路といった複数の分野が組み合わされています。

原典の問題文(防衛医科大学校 2027年 数学 第5問)

\(xy\) 平面上において、点 \(\mathrm{A}(0,\ 6)\) を中心とする半径 \(1\) の円を \(C\) とし、直線 \(\ell:y=2x+1\) を考える。

点 \(\mathrm{A}\) と直線 \(\ell\) に関して対称な点を \(\mathrm{A}'(\alpha,\ \beta)\) とすると、積 \(\alpha\beta\) は \(\boxed{\phantom{9}}\,\boxed{\phantom{9}}\) である。

次に、点 \(\mathrm{B}(0,\ 4)\) をとる。円 \(C\) 上の各点 \(\mathrm{Q}\) に対し、直線 \(\ell\) 上の点 \(\mathrm{P}\) を、距離の和 \(\mathrm{BP}+\mathrm{PQ}\) が最小となるように定める。

点 \(\mathrm{Q}\) が円 \(C\) 上を動くとき、対応する点 \(\mathrm{P}\) の \(x\) 座標の最小値を \(\gamma\)、最大値を \(\delta\) とする。このとき、積 \(\gamma\delta\) を既約分数で表すと、次のようになる。

\[ \gamma\delta=\dfrac{\boxed{\phantom{9}}\,\boxed{\phantom{9}}\,\boxed{\phantom{9}}}{\boxed{\phantom{9}}\,\boxed{\phantom{9}}} \]

解答欄の四角は入る数字を表します。以下では、この二つの空欄に入る値を順に求めていきます。

円C(中心A(0,6)、半径1)、直線ℓ:y=2x+1、点B(0,4)の初期配置図
図1:円 \(C\)・直線 \(\ell\)・点 \(\mathrm{A}\)・点 \(\mathrm{B}\) の位置関係(防衛医科大学校 2027年 数学 第5問)

問題を解く前に押さえる3つの観察ポイント

計算に入る前に、本問の構造を次の3点として整理しておくと、方針が立てやすくなります。

  • 直線を経由する距離の和がテーマです。\(\mathrm{BP}+\mathrm{PQ}\) のように直線上の点を経由する最短経路は、直線に関する反射と相性がよいと見当がつきます。
  • 二段階の最適化になっています。まず各 \(\mathrm{Q}\) ごとに最短点 \(\mathrm{P}\) を決め、その後 \(\mathrm{Q}\) を円周上で動かして \(\mathrm{P}\) の \(x\) 座標の範囲を調べます。
  • 点 \(\mathrm{A}(0,\ 6)\) と点 \(\mathrm{B}(0,\ 4)\) がどちらも \(y\) 軸上にあります。前半で求める対称点が、後半の計算を大きく簡単にする配置につながります。

「距離の和の最小」と「最短点の値域」は何が違う?

本問でつまずきやすいのは、二つの最適化を混同してしまう点です。ここを分けて考えることが、すべての解法に共通する出発点になります。

第一段階:各Qごとに距離の和BP+PQを最小化する

まず点 \(\mathrm{Q}\) を一つ固定し、直線 \(\ell\) 上で \(\mathrm{BP}+\mathrm{PQ}\) を最小にする点 \(\mathrm{P}\) を決めます。これは「直線上の点を経由する最短経路」であり、点 \(\mathrm{Q}\) ごとに最短点 \(\mathrm{P}(\mathrm{Q})\) が一つ定まります。

第二段階:最短点Pのx座標が動く範囲を求める

次に、点 \(\mathrm{Q}\) を円 \(C\) 上で動かし、第一段階で決まった \(\mathrm{P}(\mathrm{Q})\) の \(x\) 座標が取る最小値 \(\gamma\) と最大値 \(\delta\) を求めます。求めたいのは距離の和そのものの最小値ではなく、最短点の位置である点に注意します。

したがって、\(\mathrm{P}\) と \(\mathrm{Q}\) を同時に動かして \(\mathrm{BP}+\mathrm{PQ}\) を一度に最小化するのとは、目的がまったく異なります。内側の最短化を先に片づけ、その結果を外側で動かす、という入れ子の構造だととらえてください。

最短経路と円の問題はどの解法から考える?

二段階の構造が見えたら、それぞれの段階で使う道具を選びます。本問では、どちらの段階も定番の図形操作でまかなえます。

反射で折れ線を一本の線分に直す発想

第一段階の「直線を経由する距離の和」は、点 \(\mathrm{Q}\) を直線 \(\ell\) に関して反射した点 \(\mathrm{Q}'\) を用いると、折れ線 \(\mathrm{B}\to\mathrm{P}\to\mathrm{Q}\) が線分 \(\mathrm{B}\mathrm{Q}'\) に置きかわります。最短経路を「2点を結ぶ直線」に変えるのが、反射の役割です。

円を定点から見た方向の限界(接線)をとらえる

第二段階では、反射で生じた円を点 \(\mathrm{B}\) から眺めます。円周上の点へ向かう視線の方向は、点 \(\mathrm{B}\) から円に引いた二本の接線の間に限られ、その両端が最大・最小を与えます。動く点を一つずつ追うのではなく、視野の端に注目するわけです。

解法を選ぶ目安は、次のように整理できます。

  • 図形で境界が見えるなら、接線を使う本解が最短です。
  • 最大・最小の積だけを速く求めたいなら、点 \(\mathrm{P}\) を固定して実現可能性を調べる別解が有効です。
  • 単位円の内積条件に慣れているなら、共線条件を線形関数の値域で処理する別解が合います。
  • 接線の構図が浮かばないときは、角度で一変数化して微分する別解に切りかえられます。

本解:反射と接線の見込み角で最短点を求める

ここからが本問の中心です。反射で最短経路を直線にし、円の接線で方向の限界を読む、という流れで解き切ります。

本解のSTEP(反射→接線→交点)

  1. 点 \(\mathrm{A}\) を直線 \(\ell\) に関して反射し、対称点 \(\mathrm{A}'\) と反射後の円 \(C'\) を求めます。
  2. 三角不等式と等号条件から、最短点が \(\mathrm{P}=\mathrm{B}\mathrm{Q}'\cap\ell\) と一意に決まることを示します。
  3. 点 \(\mathrm{B}\) から円 \(C'\) に引いた二本の接線で、視線の傾き \(k\) の範囲を決めます。
  4. 交点の \(x\) 座標 \(t=\dfrac{3}{2-k}\) が \(k\) について増加することを使い、積 \(\gamma\delta\) を求めます。

模範解答(記述例)

まず、点 \(\mathrm{A}\) の対称点 \(\mathrm{A}'\) を求めます。直線 \(\ell\) は \(2x-y+1=0\) です。点 \(\mathrm{A}(0,\ 6)\) から \(\ell\) に下ろした垂線は \(y=-\dfrac12 x+6\) なので、垂線の足は \(\mathrm{H}=(2,\ 5)\) となります。

\(\mathrm{H}\) は線分 \(\mathrm{A}\mathrm{A}'\) の中点ですから、

\[ \mathrm{A}'=2\mathrm{H}-\mathrm{A}=(4,\ 4),\qquad \alpha\beta=4\cdot 4=16. \]

これで前半の空欄は \(\alpha\beta=16\) と定まりました。次に、点 \(\mathrm{Q}\) を直線 \(\ell\) に関して反射した点を \(\mathrm{Q}'\) とすると、\(\mathrm{Q}'\) は中心 \(\mathrm{A}'(4,\ 4)\)、半径 \(1\) の円

\[ C':(x-4)^2+(y-4)^2=1 \]

の上を動きます。任意の \(\mathrm{P}\in\ell\) に対して \(\mathrm{PQ}=\mathrm{PQ}'\) なので、三角不等式より

\[ \mathrm{BP}+\mathrm{PQ}=\mathrm{BP}+\mathrm{PQ}' \geqq \mathrm{BQ}' \]

が成り立ちます。

点Qを直線ℓに関して反射した点Q'と、折れ線BPQおよび線分BQ'が等しいことを示す図
図2:反射による最短経路の直線化。\(\mathrm{PQ}=\mathrm{PQ}'\) より \(\mathrm{BP}+\mathrm{PQ}=\mathrm{BQ}'\) となり、最短点は \(\mathrm{P}=\mathrm{B}\mathrm{Q}'\cap\ell\)。

ここで、点 \(\mathrm{B}\) と円 \(C'\) が直線 \(\ell\) の反対側にあることを確認します。\(f(x,y)=2x-y+1\) とおくと \(f(\mathrm{B})=-3<0\) です。一方、\(\mathrm{Q}'=(4+u,\ 4+v)\)(\(u^2+v^2=1\))と表すと

\[ f(\mathrm{Q}')=5+2u-v \geqq 5-\sqrt5 > 0 \]

となります。よって線分 \(\mathrm{B}\mathrm{Q}'\) は \(\ell\) とただ一点で交わり、その交点で三角不等式の等号が成立するので、距離の和を最小にする点は一意に

\[ \mathrm{P}=\mathrm{B}\mathrm{Q}'\cap\ell \]

と定まります。以下、点 \(\mathrm{Q}'\) が円 \(C'\) 上を動くときの、この交点の \(x\) 座標の範囲を求めます。

点 \(\mathrm{B}(0,\ 4)\) と円 \(C'\) の中心 \(\mathrm{A}'(4,\ 4)\) は同じ高さにあり、\(\mathrm{B}\mathrm{A}'=4\) です。点 \(\mathrm{B}\) から円 \(C'\) に引いた接線の接点を \(\mathrm{T}\) とすると、半径と接線は接点で直交するので \(\angle \mathrm{B}\mathrm{T}\mathrm{A}'=90^{\circ}\) であり、

\[ \mathrm{B}\mathrm{T}=\sqrt{\mathrm{B}\mathrm{A}'^{2}-\mathrm{A}'\mathrm{T}^{2}}=\sqrt{4^2-1^2}=\sqrt{15}. \]

点Bから反射円C'へ引いた二本の接線、接点T、直角三角形BA'Tと見込み角φを示す図
図3:点 \(\mathrm{B}\) から円 \(C'\) を見たときの視野の端は二本の接線。直角三角形 \(\mathrm{B}\mathrm{A}'\mathrm{T}\) から \(\tan\varphi=\dfrac{1}{\sqrt{15}}\)。

接線と水平線 \(\mathrm{B}\mathrm{A}'\) のなす鋭角を \(\varphi\) とすると \(\tan\varphi=\dfrac{\mathrm{A}'\mathrm{T}}{\mathrm{B}\mathrm{T}}=\dfrac{1}{\sqrt{15}}\) です。点 \(\mathrm{B}\) から円 \(C'\) に向かう直線の傾きを \(k\) とすると、円と交わる方向は二本の接線の間にあり、両端も接点で実現するので

\[ -\dfrac{1}{\sqrt{15}} \leqq k \leqq \dfrac{1}{\sqrt{15}}. \]

この直線 \(y=4+kx\) と \(\ell:y=2x+1\) の交点を \(\mathrm{P}=(t,\ 2t+1)\) とすると \(4+kt=2t+1\) から

\[ t=\dfrac{3}{2-k}. \]

ここで \(k \leqq \dfrac{1}{\sqrt{15}} < 2\) より \(2-k>0\) であり、\(t\) は \(k\) の増加関数です。したがって

\[ \gamma=\dfrac{3}{\,2+\frac{1}{\sqrt{15}}\,},\qquad \delta=\dfrac{3}{\,2-\frac{1}{\sqrt{15}}\,} \]

となり、積は

\[ \gamma\delta=\dfrac{9}{\left(2+\frac{1}{\sqrt{15}}\right)\left(2-\frac{1}{\sqrt{15}}\right)}=\dfrac{9}{\,4-\frac{1}{15}\,}=\dfrac{135}{59}. \]

\(135\) と \(59\) は互いに素なので、これは既約分数です。有理化すれば \(\gamma=\dfrac{90-3\sqrt{15}}{59}\)、\(\delta=\dfrac{90+3\sqrt{15}}{59}\) で、後半の空欄は \(\gamma\delta=\dfrac{135}{59}\) と定まります。

論述・計算のコツ(接点の座標は不要)

この解法では、接点の座標も二つの解 \(\gamma,\ \delta\) そのものも求める必要がありません。\(\mathrm{B}\mathrm{A}'=4\) と半径 \(1\) から接線長 \(\sqrt{15}\) を出し、傾きの絶対値の二乗が \(\dfrac{1}{15}\) であることだけを使えば、積は一気に求まります。答案では、\(t=\dfrac{3}{2-k}\) が単調増加であることと、接線方向が実際に端点を実現することを、短く一言添えておくと安全です。

試験場での検算ポイント

  • 対称点 \(\mathrm{A}'=(4,\ 4)\) は、中点 \((2,\ 5)\) が直線 \(\ell\) 上にあることでも確かめられます。
  • 接線の傾きは正負対称で、その絶対値の二乗は \(\dfrac{1}{15}\) です。接線長 \(\sqrt{15}\) と半径 \(1\) を取り違えないようにします。
  • 水平な視線 \(k=0\) のとき \(\mathrm{P}=\left(\dfrac32,\ 4\right)\) となり、\(\gamma<\dfrac32<\delta\) と整合します。\(\gamma\delta=\dfrac{135}{59}\) は \(\left(\dfrac32\right)^2=\dfrac94\) に近い正の数で、符号と桁の確認にも使えます。

別解では点Pや単位円をどう使って解く?

本解は図形的で速い一方、同じ答えへ別の入口からもたどり着けます。発想の引き出しを増やすために、代表的な3つの別解を見ておきます。

別解1:点Pの実現可能性を逆算する

本解では円周上の点を動かしましたが、逆に直線 \(\ell\) 上の点 \(\mathrm{P}=(t,\ 2t+1)\) を先に固定し、それが最短点として実現できる条件を調べます。必要なのは、直線 \(\mathrm{B}\mathrm{P}\) が円 \(C'\) と交わることです。

\(\overrightarrow{\mathrm{BP}}=(t,\ 2t-3)\)、\(\overrightarrow{\mathrm{BA}'}=(4,\ 0)\) より、点 \(\mathrm{A}'\) から直線 \(\mathrm{B}\mathrm{P}\) までの距離 \(d\) は

\[ d=\dfrac{4|2t-3|}{\sqrt{t^2+(2t-3)^2}}. \]

これが半径 \(1\) 以下という条件 \(d \leqq 1\) を整理すると、

\[ 15(2t-3)^2 \leqq t^2,\qquad\text{すなわち}\qquad 59t^2-180t+135 \leqq 0. \]

点 \(\mathrm{B}\) と円 \(C'\) が \(\ell\) の反対側にあるので、交わった交点 \(\mathrm{Q}'\) に対して \(\mathrm{P}\) は自動的に線分 \(\mathrm{B}\mathrm{Q}'\) 上にあり、この不等式は必要十分条件になります。したがって \(\gamma,\ \delta\) は \(59t^2-180t+135=0\) の二根で、解と係数の関係から \(\gamma\delta=\dfrac{135}{59}\) と直ちに求まります。二根そのものを求める必要がないのが利点です。

別解2:単位円周上の線形関数の値域で解く

反射後の円上の点を \(\mathrm{Q}'=(4+u,\ 4+v)\)(\(u^2+v^2=1\))とおきます。\(\mathrm{B},\ \mathrm{P},\ \mathrm{Q}'\) が一直線上にある条件を整理すると

\[ (2t-3)u-tv=12-8t \]

という \((u,\ v)\) の一次式になります。単位円周上で左辺は \(-\sqrt{(2t-3)^2+t^2}\) から \(\sqrt{(2t-3)^2+t^2}\) までのすべての値を取るので、この式を満たす点が存在する必要十分条件は

\[ |12-8t| \leqq \sqrt{(2t-3)^2+t^2}. \]

両辺を二乗すると、別解1と同じ \(59t^2-180t+135 \leqq 0\) が得られ、\(\gamma\delta=\dfrac{135}{59}\) となります。ここで大切なのは、Cauchy–Schwarz の不等式だけでは必要条件しか示せないため、線形関数が最小値から最大値までのすべての値を取ること(十分性)を一言補う点です。

別解3:三角関数の媒介変数表示と微分で解く

接線の構図がすぐ見えないときは、円周上の点を角度で表して一変数化します。\(\mathrm{Q}'=(4+\cos\theta,\ 4+\sin\theta)\) とおくと、対応する \(\mathrm{P}\) の \(x\) 座標は

\[ t(\theta)=\dfrac{3(4+\cos\theta)}{8+2\cos\theta-\sin\theta}. \]

分母は \(8+2\cos\theta-\sin\theta \geqq 8-\sqrt5>0\) で正なので、全域で微分でき、

\[ t'(\theta)=\dfrac{3(1+4\cos\theta)}{(8+2\cos\theta-\sin\theta)^2}. \]

よって \(t'(\theta)=0\) は \(\cos\theta=-\dfrac14\) と同値で、このとき \(\sin\theta=\pm\dfrac{\sqrt{15}}{4}\) です。二つの停留点での値が \(\gamma,\ \delta\) にあたり、積を計算するとやはり \(\gamma\delta=\dfrac{135}{59}\) になります。図形の観察に行き詰まっても確実に進められる方法です。

参考解から見える本問の数学的背景とは?

ここまでの解法は、入口こそ違えど、最後はすべて同じ二次方程式 \(59t^2-180t+135=0\) に行き着きます。その背景を知ると、なぜ答えがきれいな有理数になるのかが見えてきます。

二次形式・一般化固有値・方べきから同じ条件を見る

より進んだ見方として、本問の極値条件はいくつかの形で表せます。いずれも答案に必須ではありませんが、同じ構造を違う角度から眺める練習になります。

  • 二次形式:点 \(\mathrm{B}\) を通る方向 \(\boldsymbol{w}\) が円 \(C'\) に接する条件を二次形式 \(\Phi(\boldsymbol{w})=0\) で表すと、\(\gamma\delta\) は固定ベクトルを代入した二つの値の比 \(\dfrac{\Phi(\boldsymbol{v})}{\Phi(\boldsymbol{e})}=\dfrac{135}{59}\) として出ます。
  • 一般化固有値:円周を有理媒介変数で表すと \(t\) は二つの二次形式の比になり、その極値は \(\det(M-tN)=0\) の解、積は \(\dfrac{\det M}{\det N}=\dfrac{135}{59}\) です。大学の線形代数で学ぶ考え方につながります。
  • 方べきと反転:点 \(\mathrm{B}\) から円 \(C'\) へ引いた半直線は通常2点で交わりますが、方向の限界では二つの交点が一致して接線になります。方べき \(\mathrm{B}\mathrm{A}'^2-1^2=15\) から、接点が \(x=\dfrac{15}{4}\) と求まります。

このほか、反射を使わず垂直距離を重みとする内分で最短点を表す方法や、距離の和 \(F(t,\theta)\) の二段階の停留条件から接線を導く変分的な方法もあります。どれも発想の出発点は異なりますが、「円を一点から見た視野の端」という同じ幾何へ帰着します。

なぜ積γδが有理数になるのか(逆数と調和平均)

\(\gamma,\ \delta\) 自体は \(\sqrt{15}\) を含む無理数です。それでも積が有理数になるのは、逆数に対称性があるからです。\(\dfrac1t=\dfrac{2-k}{3}\) で、接線の傾きが \(k=\pm\dfrac{1}{\sqrt{15}}\) と正負対称なので、

\[ \dfrac1\gamma+\dfrac1\delta=\dfrac43,\qquad \dfrac1{\gamma\delta}=\left(\dfrac23\right)^2-\left(\dfrac{1}{3\sqrt{15}}\right)^2=\dfrac{59}{135}. \]

よって \(\gamma\delta=\dfrac{135}{59}\) です。さらに \(\dfrac{2}{\frac1\gamma+\frac1\delta}=\dfrac32\) は \(\gamma,\ \delta\) の調和平均で、これは水平な視線 \(y=4\) と \(\ell\) の交点の \(x\) 座標 \(\dfrac32\) に一致します。無理数が対になって現れ、積で平方根が消える仕組みが、配置の対称性と対応しているわけです。

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9つの解法の比較と本問から学べることの総整理

最後に、ここまでの解法を横断的に比べ、本問から持ち帰るべき考え方をまとめます。解法の数を競うのではなく、場面に応じて選べることが目標です。

解法の比較表(発想・道具・使いやすさ)

解法 発想の核 主な道具 試験での使いやすさ・特徴
本解(接線) 反射+視線の限界 三角比・接線 最短・図形的で第一候補
別解1(逆算) 点Pを固定し実現可能性 点と直線の距離 積だけなら最速
別解2(内積) 共線条件の値域 単位円・Cauchy–Schwarz ベクトルに慣れた人向き
別解3(微分) 角度で一変数化 商の微分 接線が見えない時の確実策
参考解1(内分) 反射せず最短点を表す 重み付き内分 計算は重め・位置の理解に
参考解2(変分) 二段階の停留条件 微分・凸性 接線が出る必然の理解に
参考解3(二次形式) 接線方向の判定式 二次形式 一般化・別配置に強い
参考解4(固有値) 二次形式の比 行列式 大学数学への橋渡し
参考解5(方べき) 二交点の合体 方べき・反転 幾何的背景の理解に

本問から学べること(まとめ)

冒頭に挙げた学習事項を、ここでもう一度たどり直します。

  • 直線を経由する距離の和の最小は、まず反射で折れ線を一本の線分に直す——これが第一段階の定石でした。
  • 反射で生じた円を定点から見ると、視線は二本の接線に挟まれ、その両端が最大・最小を決めました。これが本問の核心です。
  • 最大・最小を直接求めず、点を固定して円と直線の交差条件に置きかえる逆算も、同じ答えへ確実に導きました。
  • 問われたのは積だけだったので、二次方程式を解かず解と係数の関係で読み取るのが最短でした。
  • 同じ条件が接線・判別式・微分・二次形式として現れることを知れば、初見の問題でも自分に合う解法を選びやすくなります。

本問が教えてくれる最大のポイントは、円周上の点を追い回すのではなく、円を一点から見た「視野の端」に注目することです。その端は接線であり、同じ事実を二次不等式や微分、二次形式からも発見できます。こうした共通構造を意識する姿勢が、医学部・難関大の数学で解法選択の力を支えます。

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    Q&A

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    なぜγとδを別々に求めなくても積γδが出せるのですか?

    問われているのが積だけだからです。最短点の \(x\) 座標が満たす二次方程式 \(59t^2-180t+135=0\) を作れば、解と係数の関係から積は \(\dfrac{\text{定数項}}{\,t^2\text{の係数}\,}=\dfrac{135}{59}\) と読めます。和や積などの対称式だけを問われたときに使える省力法で、二つの解を解の公式で求める必要はありません。

    反射するのは点Qと点Bのどちらでもよいですか?

    どちらでも最短点 \(\mathrm{P}\) は同じになります。点 \(\mathrm{B}\) を反射した点 \(\mathrm{B}'=\left(\dfrac{12}{5},\ \dfrac{14}{5}\right)\) を使えば、\(\mathrm{B}',\ \mathrm{P},\ \mathrm{Q}\) が一直線上に並び、\(\mathrm{P}=\mathrm{B}'\mathrm{Q}\cap\ell\) として求められます。方向ベクトルを使うときは、「同一直線上にあること」と「同じ向きであること」を混同しないよう注意します。

    「直線BPが円C'と交わる」条件だけで十分ですか?

    一般には不十分です。直線が円と交わっても、その交点 \(\mathrm{Q}'\) に対して \(\mathrm{P}\) が線分 \(\mathrm{B}\mathrm{Q}'\) 上にあるとは限らないからです。本問では、点 \(\mathrm{B}\) と円 \(C'\) が直線 \(\ell\) の反対側にあるという配置が、この十分性を保証します。答案では、この半平面の位置関係を一言添えておくのが安全です。

    本解(接線)と別解3(微分)はどちらが試験向きですか?

    本問では、反射と接線による本解が計算も論証も短く、第一候補になります。一方、接線の構図が見えないときは、円周上の点を角度 \(\theta\) で表して一変数関数 \(t(\theta)\) を微分する別解3が確実な代替になります。どちらも最後は同じ二次方程式に行き着きます。

    参考文献

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