2027年に実施された防衛医科大学校・医学科の数学第2問は、直角をもつ凸四角形ABCDの対角線の長さと、三角形の内接円の半径を求める図形の計量問題です。この記事では、2つの直角三角形から円に内接する四角形を見抜く着眼点を出発点に、トレミーの定理を使う本解と、補角・相似・座標を使う別解を、医学部・難関大を目指す受験生と保護者に向けて順を追って解説します。

本問から学べること

  • 直角が与えられたら、まず三平方の定理で決まる長さを求め、残りの2辺の平方和とも一致しないかを確かめる。
  • 2つの直角の頂点が対角線を共通の斜辺にするとき、4つの頂点は同じ円周上に並び、円に内接する四角形として扱える。
  • 円に内接する四角形では、トレミーの定理・正弦定理・対角の補角関係を使って、対角線や角を四辺の長さから求められる。
  • 求めたい線分をいきなり未知数にせず、面積や角を先に確定してから最後に長さを出す進め方もある。
  • 図形問題では、計算で出てきた候補のうち、凸性などの配置条件に合うものだけを答えに選ぶ。

SSS Educationは、東京大学理科三類の学生を中心とした講師陣が、医学部・難関大学の受験指導を行う予備校です。防衛医科大学校医学部医学科をはじめとする医学部への合格者を送り出しており、本問のような図形の計量では、解法の丸暗記ではなく「どの構造に気づけば最短で解けるか」という着眼点の指導を重視しています。


目次

防衛医科大学校2027年・数学第2問はどんな問題?【問題文と着眼点】

防衛医科大学校医学科の数学は、数学I・II・III・A・B・Cの全範囲から記述式で出題されます。第2問は、四辺の長さと1つの直角が与えられた四角形をあつかう平面図形の問題でした。まずは問題文を正確に確認します。

防衛医科大学校2027年・数学第2問の問題文

凸四角形 \(\mathrm{ABCD}\) において、\(\mathrm{AB}=39\)、\(\mathrm{BC}=41\)、\(\mathrm{CD}=3\)、\(\mathrm{DA}=13\) であり、\(\angle\mathrm{DAB}=90^\circ\) とする。

(1) 対角線 \(\mathrm{AC}\) の長さを求めよ。

(2) 三角形 \(\mathrm{ABC}\) の内接円の半径を求めよ。

凸四角形ABCDの図。AB=39、BC=41、CD=3、DA=13で、頂点Aに直角記号がついている。
図1:与えられた凸四角形ABCD(4辺の長さと、頂点Aの直角)

計算前に見抜きたい「2つの直角三角形」という構造

対角線 \(\mathrm{AC}\) をいきなり未知数として計算するのは、必ずしも近道ではありません。先に、直角が与えられた三角形 \(\mathrm{ABD}\) に注目します。三平方の定理より、

\[ \mathrm{BD}^2=\mathrm{AB}^2+\mathrm{AD}^2=39^2+13^2=1690 \]

です。ここで残りの2辺 \(\mathrm{BC}=41\)、\(\mathrm{CD}=3\) に目を向けると、

\[ \mathrm{BC}^2+\mathrm{CD}^2=41^2+3^2=1690 \]

となり、\(\mathrm{BD}^2\) と一致します。三平方の定理の逆から \(\angle\mathrm{BCD}=90^\circ\) が分かり、三角形 \(\mathrm{ABD}\) と \(\mathrm{BCD}\) は、対角線 \(\mathrm{BD}\) を共通の斜辺とする2つの直角三角形だと分かります。これが本問の核心となる構造です。直角が出てきたら、まず三平方の定理で決まる長さを求め、その平方和がほかの2辺の平方和とも一致しないかを確かめる——この手順を習慣にしておくと、隠れた直角に気づけます。

4つの頂点が同じ円周上に並ぶ(円に内接する四角形)

\(\angle\mathrm{BAD}=\angle\mathrm{BCD}=90^\circ\) が分かったので、円周角の定理(直径に対する円周角は \(90^\circ\))を逆にたどると、点 \(\mathrm{A}\) と点 \(\mathrm{C}\) はともに線分 \(\mathrm{BD}\) を直径とする円周上にあります。つまり、四角形 \(\mathrm{ABCD}\) は円に内接し、その外接円の直径が \(\mathrm{BD}\) です。

対角線BDを直径とする円の上に、A・B・C・Dの4点が並ぶ図。頂点AとCに直角記号がつき、三角形ABDと三角形BCDがBDを共通の斜辺としている。
図2:BDを直径とする円にA・B・C・Dが並ぶ(共通の斜辺をもつ2つの直角三角形)

この一歩で、四辺と対角線を結ぶトレミーの定理、円周角の定理、外接円を使う正弦定理、対角の和が \(180^\circ\) になる性質などが、すべて使える状態になります。四辺 \(39,\ 41,\ 3,\ 13\) がすべて分かっているので、四辺と2本の対角線を1つの式で結ぶトレミーの定理が、最短の候補として見えてきます。

対角線ACはどの解法で求める?方針を決める思考の流れ

構造が見えたら、次は「どの道具で対角線を求めるか」を選びます。本問では、「4点が同じ円周上にある(四角形が円に内接する)」という共通の出発点から、いくつかの方向に進めます。

円に内接する四角形で使える3つの定理(トレミー・補角・相似)

  1. 四辺がすべて既知なので、トレミーの定理で対角線 \(\mathrm{AC}\) を直接求める(本解)。
  2. \(\mathrm{AC}=x\) とおき、対角 \(\angle\mathrm{ABC}\) と \(\angle\mathrm{ADC}\) が補角であることと余弦定理を組み合わせて \(x\) を求める(別解1)。
  3. 2つの直角三角形から角を合成し、加法定理で \(\angle\mathrm{ABC}\) の三角比を求めて余弦定理につなぐ(別解2)。
  4. 対角線の交点にできる相似や、座標を使って、線分比や位置から求める(別解3・参考解)。

問(2)の内接円の半径へつなぐ考え方

問(2)は、問(1)で対角線 \(\mathrm{AC}\) が決まれば、三角形 \(\mathrm{ABC}\) の三辺がそろいます。あとは、面積 \(S\) と半周長 \(s\) を使う公式 \(S=rs\) から内接円の半径 \(r\) を出すのが基本です。面積を角 \(\angle\mathrm{ABC}\) から求める方法のほか、\(\angle\mathrm{ABC}\) の半角 \(\tan\dfrac{\angle\mathrm{ABC}}{2}\) と接線長を使う方法、三辺からヘロンの公式を使う方法もあります。「どの中間量をすでに手にしているか」で、最も短い接続を選びましょう。

【本解】円に内接する四角形とトレミーの定理による対角線の求め方

構造の発見から最短で答えに到達できるのが、トレミーの定理を使う本解です。

本解の流れ(トレミーの定理で対角線ACを求める4ステップ)

  1. 三平方の定理で \(\mathrm{BD}\) を求め、\(\angle\mathrm{BCD}=90^\circ\) を示す。
  2. 四角形が円に内接することから、トレミーの定理で \(\mathrm{AC}\) を求める。
  3. 外接円の直径が \(\mathrm{BD}\) であることと正弦定理から、\(\sin\angle\mathrm{ABC}\) を求める。
  4. 三角形 \(\mathrm{ABC}\) の面積と半周長から、内接円の半径を求める。

模範解答:対角線ACと内接円の半径を求める

(1) \(\angle\mathrm{DAB}=90^\circ\) より

\[ \mathrm{BD}^2=\mathrm{AB}^2+\mathrm{AD}^2=39^2+13^2=1690 \]

であり、一方

\[ \mathrm{BC}^2+\mathrm{CD}^2=41^2+3^2=1690=\mathrm{BD}^2 \]

だから、三平方の定理の逆より \(\angle\mathrm{BCD}=90^\circ\) です。よって点 \(\mathrm{A},\ \mathrm{C}\) はともに \(\mathrm{BD}\) を直径とする円周上にあり、四角形 \(\mathrm{ABCD}\) は円に内接します。トレミーの定理より

\[ \mathrm{AC}\cdot\mathrm{BD}=\mathrm{AB}\cdot\mathrm{CD}+\mathrm{AD}\cdot\mathrm{BC} \]

なので、\(\mathrm{BD}=13\sqrt{10}\) を用いて

\[ \mathrm{AC}\cdot13\sqrt{10}=39\cdot3+13\cdot41=650 \]

となります。したがって

\[ \mathrm{AC}=\dfrac{650}{13\sqrt{10}}=\dfrac{50}{\sqrt{10}}=5\sqrt{10} \]

です。対角線 \(\mathrm{AC}=5\sqrt{10}\) が答えになります。

(2) \(\beta=\angle\mathrm{ABC}\) とおきます。三角形 \(\mathrm{ABC}\) の外接円は \(\mathrm{BD}\) を直径とする円なので、正弦定理より

\[ \dfrac{\mathrm{AC}}{\sin\beta}=\mathrm{BD} \]

です。よって

\[ \sin\beta=\dfrac{\mathrm{AC}}{\mathrm{BD}}=\dfrac{5\sqrt{10}}{13\sqrt{10}}=\dfrac{5}{13} \]

となり、三角形 \(\mathrm{ABC}\) の面積 \(S\) は

\[ S=\dfrac12\,\mathrm{AB}\cdot\mathrm{BC}\,\sin\beta=\dfrac12\cdot39\cdot41\cdot\dfrac{5}{13}=\dfrac{615}{2} \]

です。内接円の半径を \(r\)、半周長を \(s\) とすると

\[ s=\dfrac{39+41+5\sqrt{10}}{2}=\dfrac{80+5\sqrt{10}}{2} \]

であり、\(S=rs\) より

\[ r=\dfrac{615}{80+5\sqrt{10}}=\dfrac{123}{16+\sqrt{10}}=\dfrac{123(16-\sqrt{10})}{256-10}=8-\dfrac{\sqrt{10}}{2} \]

となります。したがって内接円の半径は \(r=8-\dfrac{\sqrt{10}}{2}\) です。

論述・計算のコツと試験場での検算ポイント

答案では、\(\angle\mathrm{BCD}=90^\circ\) を三平方の定理の逆で示し、「四角形 \(\mathrm{ABCD}\) は円に内接する」と一言はっきり書くことが大切です。トレミーの定理に現れる積は \(39\cdot3+13\cdot41\) であり、辺の組合せを取り違えないように注意します。\(39=3\cdot13\) に気づくと、\(\mathrm{AC}\cdot\sqrt{10}=3\cdot3+41=50\) とまとめられ、計算が速くなります。

試験場では、次の値を手早く確かめると安心です。

  • \(39^2+13^2=41^2+3^2=1690\) が成り立つこと(4点が同じ円周上にあることを見抜く手掛かり)。
  • \(\mathrm{AC}^2=250\)、すなわち \(\mathrm{AC}=5\sqrt{10}\) であること。
  • \(\sin\beta=\dfrac{5}{13}\)、\(\cos\beta=\dfrac{12}{13}\) が \(\sin^2\beta+\cos^2\beta=1\) を満たすこと。
  • (2)の \(s\) は周長ではなく半周長であること。

【別解1】トレミーを使わず補角と余弦定理で解くには?

トレミーの定理が思い出せない、あるいは使わずに進めたいときは、円に内接する四角形の「対角の和は \(180^\circ\)」という性質と余弦定理だけで解けます。

対角の和が180°になる性質と余弦定理の連立

(1) \(x=\mathrm{AC}\) とおきます。四角形 \(\mathrm{ABCD}\) は円に内接するので \(\angle\mathrm{ABC}+\angle\mathrm{ADC}=180^\circ\)、したがって \(\cos\angle\mathrm{ABC}=-\cos\angle\mathrm{ADC}\) です。三角形 \(\mathrm{ABC}\) と \(\mathrm{ADC}\) に余弦定理を使うと

\[ \cos\angle\mathrm{ABC}=\dfrac{39^2+41^2-x^2}{2\cdot39\cdot41}=\dfrac{3202-x^2}{3198} \]

\[ \cos\angle\mathrm{ADC}=\dfrac{13^2+3^2-x^2}{2\cdot13\cdot3}=\dfrac{178-x^2}{78} \]

です。補角の関係から

\[ \dfrac{3202-x^2}{3198}=-\dfrac{178-x^2}{78} \]

となり、\(3198=41\cdot78\) に注目すると

\[ (3202-x^2)+41(178-x^2)=0,\qquad 42x^2=10500,\qquad x^2=250 \]

を得ます。\(x>0\) より \(\mathrm{AC}=5\sqrt{10}\) です。

(2) このとき

\[ \cos\angle\mathrm{ABC}=\dfrac{3202-250}{3198}=\dfrac{12}{13} \]

で、\(0^\circ<\angle\mathrm{ABC}<180^\circ\) より \(\sin\angle\mathrm{ABC}=\dfrac{5}{13}\) です。以降は本解と同じく \(S=\dfrac{615}{2}\)、\(r=8-\dfrac{\sqrt{10}}{2}\) となります。

検算のポイントは、補角の関係を使うのが \(\angle\mathrm{ABC}\) と \(\angle\mathrm{ADC}\) の組であること、\(3198=41\cdot78\) で分母がきれいに処理できること、そして \(x^2=250\) から正の平方根をとることの3点です。

【別解2】2つの直角三角形から角を合成するとどうなる?

円に内接することを使わなくても、2つの直角三角形から角を合成すれば、余弦定理だけで対角線を決められます。角度を先に押さえたい人に向く方法です。

加法定理で∠ABCの三角比を求める

(1) \(\alpha=\angle\mathrm{ABD}\)、\(\gamma=\angle\mathrm{DBC}\) とおくと、凸性より \(\beta=\angle\mathrm{ABC}=\alpha+\gamma\) です。\(\mathrm{BD}=13\sqrt{10}\) と2つの直角三角形から

\[ \sin\alpha=\dfrac{13}{\mathrm{BD}},\quad \cos\alpha=\dfrac{39}{\mathrm{BD}},\quad \sin\gamma=\dfrac{3}{\mathrm{BD}},\quad \cos\gamma=\dfrac{41}{\mathrm{BD}} \]

がわかります。加法定理より

\[ \cos\beta=\cos\alpha\cos\gamma-\sin\alpha\sin\gamma=\dfrac{39\cdot41-13\cdot3}{1690}=\dfrac{1560}{1690}=\dfrac{12}{13} \]

です。三角形 \(\mathrm{ABC}\) に余弦定理を使うと

\[ \mathrm{AC}^2=39^2+41^2-2\cdot39\cdot41\cdot\dfrac{12}{13}=3202-2952=250 \]

となり、\(\mathrm{AC}=5\sqrt{10}\) です。

5・12・13が現れる理由と半角への接続

正弦の加法定理からは

\[ \sin\beta=\sin\alpha\cos\gamma+\cos\alpha\sin\gamma=\dfrac{13\cdot41+39\cdot3}{1690}=\dfrac{5}{13} \]

が得られ、\(\sin\beta=\dfrac{5}{13}\)、\(\cos\beta=\dfrac{12}{13}\) という \(5^2+12^2=13^2\) の形が現れます。ここからは本解と同じく \(S=\dfrac{615}{2}\)、\(r=8-\dfrac{\sqrt{10}}{2}\) です。

なお、半角に注目すると \(\tan\dfrac{\beta}{2}=\dfrac{\sin\alpha+\sin\gamma}{\cos\alpha+\cos\gamma}=\dfrac{13+3}{39+41}=\dfrac{1}{5}\) となり、問(2)では接線長を使って内接円の半径を直接求めることもできます。検算では、\(\beta=\alpha+\gamma\)(差ではなく和)であること、余弦は積の差・正弦は積の和であることを確認しましょう。

【別解3】対角線の交点にできる相似から何がわかる?

三角関数を使わず、相似だけで押し切る方法もあります。対角線の比と面積比を同時に手に入れられるのが利点です。

円周角が生む2組の相似と対角線の比

(1) 対角線 \(\mathrm{AC}\) と \(\mathrm{BD}\) の交点を \(\mathrm{P}\) とします。四角形が円に内接することと円周角の定理から、

\[ \triangle\mathrm{PAB}\sim\triangle\mathrm{PDC},\qquad \triangle\mathrm{PBC}\sim\triangle\mathrm{PAD} \]

が成り立ちます。それぞれの相似比は

\[ \dfrac{\mathrm{AP}}{\mathrm{DP}}=\dfrac{\mathrm{BP}}{\mathrm{CP}}=\dfrac{\mathrm{AB}}{\mathrm{DC}}=13,\qquad \dfrac{\mathrm{BP}}{\mathrm{AP}}=\dfrac{\mathrm{CP}}{\mathrm{DP}}=\dfrac{\mathrm{BC}}{\mathrm{AD}}=\dfrac{41}{13} \]

です。\(\mathrm{DP}=t\) とおくと \(\mathrm{AP}=13t\)、\(\mathrm{CP}=\dfrac{41}{13}t\)、\(\mathrm{BP}=41t\) となります。

四角形ABCDの2本の対角線と交点P。交点のまわりの4つの三角形が色分けされ、△PABと△PDC、△PBCと△PADがそれぞれ相似であることを示す。右上にP付近の拡大図がある。
図3:交点Pにできる2組の相似三角形(青どうし・赤どうしが相似)

凸四角形なので \(\mathrm{P}\) は2本の対角線の内部にあり、\(\mathrm{AC}=\mathrm{AP}+\mathrm{CP}\)、\(\mathrm{BD}=\mathrm{BP}+\mathrm{DP}\) とできます。したがって

\[ \dfrac{\mathrm{AC}}{\mathrm{BD}}=\dfrac{\mathrm{AP}+\mathrm{CP}}{\mathrm{BP}+\mathrm{DP}}=\dfrac{13+\dfrac{41}{13}}{41+1}=\dfrac{5}{13} \]

となり、\(\mathrm{BD}=13\sqrt{10}\) から \(\mathrm{AC}=5\sqrt{10}\) を得ます。

面積比から内接円の半径を求める

(2) \(\mathrm{BP}:\mathrm{DP}=41:1\) です。三角形 \(\mathrm{ABC}\) と \(\mathrm{ADC}\) は底辺 \(\mathrm{AC}\) を共有し、頂点 \(\mathrm{B},\ \mathrm{D}\) は直線 \(\mathrm{BD}\) 上にあるので、高さの比から

\[ [\mathrm{ABC}]:[\mathrm{ADC}]=\mathrm{BP}:\mathrm{DP}=41:1 \]

です。一方、四角形の面積は

\[ [\mathrm{ABCD}]=[\mathrm{ABD}]+[\mathrm{BCD}]=\dfrac12(39\cdot13+41\cdot3)=315 \]

だから、\([\mathrm{ABC}]=\dfrac{41}{42}\cdot315=\dfrac{615}{2}\) となり、やはり \(r=8-\dfrac{\sqrt{10}}{2}\) です。相似の対応順序をていねいに書くこと、面積比では \(\mathrm{B},\ \mathrm{P},\ \mathrm{D}\) が一直線上にあることを示すのが、答案での注意点です。

【参考解】座標と2つの円の交点で対角線を求めるとどうなる?

図形的な発見が進まないときのために、座標を使う確実な方法も押さえておきましょう。計算量は増えますが、手順が機械的で迷いにくいのが長所です。

直角を座標軸にして点Cを2円の交点として求める

(1) 直角を利用して \(\mathrm{A}(0,\ 0)\)、\(\mathrm{B}(39,\ 0)\)、\(\mathrm{D}(0,\ 13)\) とおき、\(\mathrm{C}(u,\ v)\) とします。\(\mathrm{BC}=41\)、\(\mathrm{CD}=3\) より

\[ (u-39)^2+v^2=41^2,\qquad u^2+(v-13)^2=3^2 \]

です。2式の差をとると \(v=3u+\dfrac{160}{13}\) となり、これを代入して整理すると

\[ 845u^2-351u-720=0,\qquad (13u-15)(65u+48)=0 \]

を得ます。

座標平面上にA(0,0)、B(39,0)、D(0,13)を置き、中心Bで半径41の円と中心Dで半径3の円を描いた図。2円の交点が2つあり、凸になる点Cを採用、もう一方のC'は不適と示している。
図4:座標設定と2つの円の交点(凸条件でCを選ぶ)

凸四角形の条件で交点を選ぶ

2つの円の交点は一般に2つ現れます。四角形 \(\mathrm{ABCD}\) が凸で、点 \(\mathrm{B},\ \mathrm{C}\) が直線 \(\mathrm{AD}\) の同じ側にあることから \(u>0\) を選び、\(u=\dfrac{15}{13}\)、\(v=\dfrac{205}{13}\) となります。もう一方の \(u=-\dfrac{48}{65}\) は点 \(\mathrm{C}\) が反対側に来るため不適です。よって

\[ \mathrm{AC}^2=u^2+v^2=\dfrac{15^2+205^2}{13^2}=250,\qquad \mathrm{AC}=5\sqrt{10} \]

です。(2) 辺 \(\mathrm{AB}\) が \(x\) 軸上にあるので、三角形 \(\mathrm{ABC}\) の面積は \(\dfrac12\cdot39\cdot\dfrac{205}{13}=\dfrac{615}{2}\)、したがって \(r=8-\dfrac{\sqrt{10}}{2}\) です。座標法では「交点が2つ出て、凸条件で1つに絞る」という場合分けが必須だと意識しておきましょう。

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解法の比較と、本問から学ぶ学習のポイント

同じ答えにたどり着く解法でも、使う道具と計算量、向いている場面は異なります。まずは一覧で整理します。

解法 主に使う道具 計算量 向いている場面
本解(トレミー) 円に内接する四角形・トレミーの定理 少ない 定理が使え、四辺が既知のとき最短で解きたい
別解1(補角) 対角の補角・余弦定理 中くらい トレミーを使わず、確実に進めたい
別解2(角の合成) 直角三角形・加法定理 中くらい 角度を先に押さえ、(2)の半角にもつなげたい
別解3(相似) 円周角・相似 少〜中 三角比を使わず、面積比も同時に欲しい
参考解(座標) 座標・2円の交点 多い 図形的な発見が進まないときの確実な代替

本問から次の図形問題に生かせる学習のポイント

最後に、冒頭の「本問から学べること」に戻って振り返ります。第一に、直角が与えられたら三平方の定理で長さを求め、その平方和が別の2辺の平方和と一致しないかを確かめる——本問では \(39^2+13^2=41^2+3^2\) が隠れた直角を教えてくれました。第二に、2つの直角が対角線を共通の斜辺にするとき、4点は同じ円周上に並び、円に内接する四角形として扱えます。

第三に、円に内接する四角形では、トレミーの定理・正弦定理・対角の補角関係を使って、対角線や角を四辺の長さから求められました。第四に、別解3のように、対角線や内接円の半径をいきなり求めず、面積や線分比を先に確定してから最後に長さを出す進め方も有効です。第五に、座標の参考解で見たとおり、計算で出た候補のうち凸性などの配置条件に合うものだけを答えに選ぶ——この一手を省くと、誤った値を拾ってしまいます。解法の数を覚えること自体が目的ではなく、「どの構造に気づけば、どの道具が効くか」を自分で選べるようになることが、本問から得るべき最大の収穫です。

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    トレミーの定理は入試の記述答案で使ってよい?

    円に内接する四角形について成り立つトレミーの定理は、受験参考書でも扱われる定理で、記述式の答案で用いて差し支えないのが一般的です。ただし、使う前に「四角形が円に内接すること」を必ず示してください。本問なら、\(\angle\mathrm{BAD}=\angle\mathrm{BCD}=90^\circ\) から \(\mathrm{A},\ \mathrm{C}\) が \(\mathrm{BD}\) を直径とする円周上にある、と書いてから定理を使います。不安があれば、トレミーを使わない別解1(補角と余弦定理)で書くと確実です。

    四角形が円に内接することは、どうやって気づけばよい?

    よくある手掛かりは2つです。1つは「直角(直径に対する円周角)が2か所にあるとき」で、本問がこの形です。もう1つは「向かい合う角の和が \(180^\circ\) になるとき」です。四辺や直角が与えられたら、まず平方和の一致や直角の有無を確認し、同じ円周上に並ぶ点がないかを疑う習慣をつけると見抜きやすくなります。

    問(2)の内接円の半径は、面積を使わずに求められる?

    求められます。\(\angle\mathrm{ABC}\) の半角が \(\tan\dfrac{\angle\mathrm{ABC}}{2}=\dfrac{1}{5}\) と分かるので、頂点 \(\mathrm{B}\) からの接線長 \(s-\mathrm{AC}\) を使って、内接円の半径を直接求められます。また、問(1)で三角形 \(\mathrm{ABC}\) の三辺がそろうため、ヘロンの公式から面積を出して \(r=S/s\) に代入する方法もあります。手元にある中間量に合わせて、短い道を選んでください。

    防衛医科大学校医学科の数学は、どんな範囲から出る?

    防衛医科大学校医学科(医学教育部)の一般選抜では、数学I・II・III・A・B・Cの全範囲から出題され、記述式を含みます。1次試験は国語・数学・英語・理科・小論文で、例年秋に実施されます(本記事は2026年に実施された試験を対象としています)。最新の出題範囲や日程は、年度によって変わることがあるため、必ず公式の学生募集要項で確認してください。

    参考文献

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